悪口とか陰口とか
正義の反対にあるものは、悪ではなく、もう一つの正義
最近は、インターネット上での書き込みによる誹謗中傷について、取り締まりが強化されているそうです。
私たちの主張というものは、正しいかどうかは別として、世間の考え方や常識と大きく異なると、異端視されたり、排除されるものです。
でも、匿名性の高い場における、相手への評価や、相手の主張への意見は、時々、根拠のないものであったり、ただの悪口であったりして、相手を傷つけるものになってしまいます。
現在は、自己アピール力が求められる時代ですが、人間関係とはギブ&テイクではなく、ギブ&ギブでこそ深まっていくもの。
コミュニケーションにおいて大切なことは、お互いが自分の意見をはっきり主張することもそうですが、その奥にある心からの声を受け取ること。
ひとり一人が自分の意見を主張できる場所があるということは素晴らしいですが、それが現状を深くみんなで考察することにつながるものであったり、現状の改善につながるもの、
そして、新しい価値観を自分にもたらしてくれて感謝につながるものであれば、もっと素敵だと思うのです。

「人が生まれたときには
実に口の中に
斧が生じている
人は悪口を語って
その斧によって
自分自身を斬るのである」
(仏典スッタニパータ)
という言葉が、仏教の教えのなかにあります。
昔から「その人が他人の悪口を言うか言わないかで人格を判断できる」と言われるように、
悪口というものは、たとえそれが事実であっても、他の人を批判する、ジャッジする結果になります。
その時、自分自身のことを棚に上げて、自分を顧みない自分勝手な状態に陥ってしまいます。
人間と言うものは、利己的であったり、うぬぼれといったものから逃れられない存在なのかもしれません。
だから、誰もが「口の中の斧」を持っているということなのでしょう。

その斧は何でできているかといえば、煩悩です。
その煩悩のなかに、「三毒」と呼ばれるものがあります。
三毒とは、「貪(とん)」「瞋恚(じんに)」「愚痴(ぐち)」の三つのこと。
「貪(とん)」は、むさぼる欲。
「瞋恚(じんに)」は、怒りと嫉妬。
「愚痴(ぐち)」は、愚かな泣きごと。
私たちは、そのように様々な貪りが湧いてくる存在なのでしょう。
でも、人間としてそう在りながらも、どんなに目立たずに、個人的なアクションを起こすことで、あなたは世界に影響を与えていくことができる存在なのです。
だから、私たちの自分で口にした何気ない言葉が、人生にとってよいほうへも悪い方へも作用を起こしていくのです。
これから進む道を恐れることはないのです。
誰の進む道にも、真の豊かさは用意されています。
それは、あなたが望むことや、信じることで、また声に出して語られた言葉によって、実際にもたらされるという法則があるからです。
言葉と思考はとても大きな力を持つ波動であって、あなたの身体や状況や人生までを形作っているのです。

「ただまさに、やわらかなる容顔をもて、一切にむかうべし」(道元)
という言葉のとおり、どのような状況でも、ただただ柔和な態度でものごとに接しなさい、ということが大切なのでしょう。
人間は、年をとるとだんだんと温厚になっていくといわれます。
そして、同じようにちょっとずついい加減になることもできるようになるもの。
それは、自分と他人の持ち合わせているものの限界の差がないことを自然に見ることができるようになるからです。
私たちは、ふとした瞬間に心に表れる思いをよく見返せば、以外なことに自分にも悪意というものがあることに気づくものです。
自分だけよければ他はどうなってもかまわないという独占欲、金銭欲、物質欲、支配欲、愛欲、肉欲など、数えきれない欲のかたまりが私たちひとり一人なのです。
つまり、苦しみの発生源は自分の中にあるのでしょう。
自我という限界を作り出して、それが自分だと思いこんで、合理的だと信じていることもあるかもしれません。
私たちは、自分のことを反省することができますが、そのような部分も含めた自分の全てを見つめることは、とても勇気がいるものです。
でも、マイナスの感情を持たない人間はいません。
そのことを自覚して、真摯に自分と向き合う時、ただ簡単にポジティブな方を向いて自分をごまかすことをやめた時、あなたのなかで何かが解決するのでしょう。

意味のある、真実の人生とは、
常に正直で、暴力を避け、真実を求め、慈愛にあふれて、誰かを愛すること。
このような生き方をして、後悔することはありません。
忘れないでください。
あなたの「正義」の反対にあるものは、「悪」ではなく、誰かの「正義」なのです。
「すべての悪意、すべてのごまかし、
いろいろな偽善やねたみ、すべての悪口を捨てて、
純粋な、みことばを慕い求めなさい。
それによって成長し、救いを得るためです」
(新約聖書 ペテロの手紙2章1~2節)
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