究極のコミュニケーション
言葉ではなく、気持ちと心で会話すること
日本では、昔から人前で泣かないことや感情を大きく出さないことを美しいとする習慣がありましたから、察するということが求められることもあります。
そのことからつながる、言葉を少なめにして相手の気持ちを察することは、とても素晴らしい美意識だと思います。
多くの人が、人間関係を良好に築いていくためには、言葉の多さと上手さが重要だと思われそうですが、それだけではありません。
私たちは、できることなら誰にも嫌われずに、誰も傷つけずに、周りの人とうまくつきあっていきたいと思っています。
人間は一人では生きていくことはできませんから、それはとても大切なことです。
でも、実際には思う通りにはいかないのは、私の誠実さが足りないからなのかとか、相手が自分とはまったく違う性格の人だからなのかとか、いろんなことを考えてしまいます。
そのことを、パレートの法則をもって、あなたに好意的な人は80%いる代わりに、批判的な人は20%存在するという考え方などで納得するのも一つの方法です。
でも、私たちが会話をする時に相手に伝えることは、言葉による情報だけではなくて、自分の気持ちや性格や人間性も含んだものすべてです。
だから、本当に大切なことは言葉だけでは伝えられないこともあるのです。
あなたのすべてを相手に伝える方法。
それは、表情やしぐさです。
言葉ではうそをつくことができても、表情やしぐさはごまかせないのです。
そのことを知っている人は、人の気持ちに気づくこともできるのでしょうし、きっと言葉に表せない心の声も察することもできるのでしょう。
私たちが普段の会話のなかで、いちばん重要に思っていることは、どのような言葉で伝えるかということです。
理解されやすいように分かりやすい言葉を使う時もあれば、難しい専門用語や外国語を使うことがふさわしいと思う時もあります。
たしかに、それはあなたの頭の中にある考えを相手によく知ってもらうための、気配りですし、思いやりでもありますから、とても大切なことです。
会話中に相手にいちばん影響を与えるものは何かを解き明かしたメラビアンの法則というものがあります。
この法則では、相手から受け取る情報は、顔の表情やしぐさから55%、声の強弱やトーンから38%、言葉の内容からは7%と説明されています。
つまり、目に見えるものからの情報がいちばん伝えられるものだとされています。
私たち人間の会話は、情報のやり取りだけでなくて、気持ちのやり取りも行われていますから、それも理解ができるのです。
だから、自分の気持ちをわかってくれないと悩んでしまう時は、言葉を巧みに使って語ろうとする必要はなくて、気持ちをこめて話すこと。
あなたの誠実さや優しさは、あなたの表情や、声のトーンや、身振りや身体全体から伝えることもできるのです。
多すぎる言葉は必要ないのです。
「他人に花をもたせよう。
自分に花の香りが残る」
(斎藤茂太)
という言葉があります。
表情と感情はつながっていると言われます。
それは、人間の脳のなかで、感情を生み出す所と表情をつくる所が近いことも関係あるそうですから。
恋人や夫婦の二人の顔がだんだん似てくるのも、私たちは同じ状況で同じように感じることをたくさん経験することによるものなのでしょう。
会話をしている時も、その人のお話しに同調して、笑ったりもらい泣きをすることがあります。
それは、その人の表情から感情が伝わって、自分も同じように感じたからなのでしょう。
嬉しいから笑うこともありますし、笑うから嬉しいこともあります。
だから、私たちが相手の表情から感情を感じる時、嬉しいとか悲しいというものの奥にある、充実感や孤独感とか、その人の今のことも今までのことも感じることができるのです。
人と人がわかり合うことは難しいことではないのです。
ただ目の前の人の表情やしぐさや言葉や、発するものからその人の本当の気落ちを知りたいと思うだけ。
その関係のなかに、お互いに信じ合えるものを感じられるはず。
あなたのことをもっと知りたいという気持ちを表情に表してみてください。
私たちは、気持ちと気持ちのやり取りをすることによって、幸せを感じるようにされていますから。
「人とつきあうのに秘訣があるとすれば、それはまずこちらが相手を好きになってしまうことではないでしょうか」
(瀬戸内寂聴)
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